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ワーム


ワーム
⇒進化
進化後の姿

医術師の娘がいた。王家直属の医術師である誇り高い父と、美しいと評判の優しい母を持ち、幼なじみには診療船の船長を務める青年がいた。娘と青年は結婚の約束を交わしていた。二人の婚姻は国中の誰もが祝福し、これから先、幸せな家庭を築いていくのだと、皆が信じて疑わなかった。

突然の事故で、青年が右腕を失うまでは。

「私があなたの右腕になります」

それから娘は医術の腕を磨き、診療船を守ろうと懸命に努めた。青年はそんな彼女を、虚ろな表情で遠くから見守ることしかできなかった。

「ぼくは……彼女に助けられてばかりだ。幼い頃から、ずっと。ぼくも力が欲しい。彼女を守れる力が欲しい」

そうつぶやいた彼の願いを聴いたのは、悪魔だった。

……

青年は娘を、緊急脱出用の小型ボートへ強引に乗せた。

「凶悪な魔獣が船内に入ってきた。君だけでも先に逃げて。ぼ、ぼくも、絶対に迎えに行くから」

娘には、彼が嘘をついていることがわかった。昔から、嘘をつくのが下手だったのだ。嘘だとわかっていても、そのときにはすでに、ボートは彼女の手に負えなくなっていた。

「どういうつもり。まだ状態のよくない患者さんがいるのに!」

診療船の中では、凶悪な魔獣が一体、無数の切断された腕を前にして不気味に微笑んでいた。魔獣のほかに、生きている者は一人もいなかった。

「オペは成功した。これだけ腕があれば、君の力になれるね。すぐに迎えに行くよ……」

診療船に火を放ち、魔獣となった青年は姿を消した。

空想クラフト工房「宝の海の魔獣たち」より