とある港町に、年の離れた兄弟がいた。親はすでに亡く、二人は支えあって生きてきた。兄は“魔獣の呪い”を持って生まれた者だったが、その人柄の良さゆえに、まわりにそれを気にさせることはなかった。弟はそんな兄を誇らしく思い、強く憧れていた。
兄弟の目標は、船を造って海へ出ること。そして、すべての海賊が夢見る海の女神に会うことだった。
そうして、やっとの思いで完成した船に乗り、二人は航海へ出た。いくつもの困難が兄弟の前に立ちはだかったが、そのたびに二人は力を合わせ、壁を乗り越えていった。
弟は心から信じていた。兄貴がいれば何も怖くない。きっと海の女神に会えるのだと。
だが、そう思っていた矢先のことだった。船は“海の悪魔”と呼ばれる巨大な魔獣に襲われた。兄は“魔獣の呪い”の力を極限まで解き放ち、海の悪魔に立ち向かっていった。けれどその果てに、兄は弟を残したまま、船とともに海の底へ沈んでしまった。
最期に「必ず戻る」と言い残して。
空想クラフト工房「宝の海の魔獣たち」より